個人開発はスタートアップに近い
スタートアップとは、需要がそもそも存在するかどうか分からない市場に対して、どうアプローチしていくのかを考える世界です。個人開発も規模は小さくなるかもしれませんが、基本的には同じ構造で、ステップもだいたい似ています。
一方でスモールビジネス(small business)というビジネスモデルもあります。こちらはすでに需要があると分かっている市場に対してどうアプローチするかというモデルです。フィットネスジムを開く、新しく教育ビジネスやスクールを始めるといった、すでに需要があることが分かっているものはこちらです。
今回の SNS「ぬい日和」も、市場としてはほぼ存在していないところから需要を検証して確かめていったので、スタートアップの流れとして紹介していきます。
ステップの全体像
1. アイデアの発掘
普段過ごしている日常の中の少しのイライラや、「こういうところに需要があるんじゃないか」というポイントをまず見つけます。
2. 要件定義と LP 作成
そのアイデアに需要があるかどうかをチェックするために、要件定義を行い、ランディングページを作成します。需要チェックのための前準備です。
3. 需要検証
広告や SNS を使って、本当に需要があるのかを検証します。
4. CPA の計算
需要検証で広告を出した場合は CPA を計算します。使ったお金に対してどのくらい人が集まったのか、というコスパの良さを測る指標です。コスパが良ければ Go、悪ければ Pivot という単純な判断に使います。
5. MVP 開発
Go の判断なら MVP を開発します。Claude Code でも Codex でも構いません。開発のやり方自体は「Claude Code iOS Development」の講座や Harness 設計の講座で説明しているので、本講座では改めては扱いません。
6. SNS 運用(開発と並行)
開発と同時並行で構いません。需要検証の際に X 広告や Instagram 広告を出すために作った SNS アカウントを使って、アプリに関連する発信をしたり、関連するユーザーのポストにいいねを押しに行ったりといった地道な作業を進めます。
7. MVP ローンチ
開発が終わったらリリースです。集まったウェイティングリストに対して「できましたよ」と報告する、リストマーケティングの形です。ここから何名かの方がアーリーアダプターとして利用を始めてくれます。
8. 分析
リリースすればデータが集まってきます。見るべき大きな指標は次のようなものです。
- 継続率(ダウンロードから 3 日後・1 週間後にちゃんと利用してもらえているか)
- どのくらい投稿してくれたのか
- 100 人が利用してどのくらい課金してくれたのか
9. アップデート(改善)
分析結果をもとに、たとえば継続されなかったのならそこを改善していきます。リリース後はこの分析と改善がメインの作業になります。地味で派手さはありませんが、かなり大事なポイントです。
10. PMF 達成
分析と改善を続けた先に目指すのが PMF(Product Market Fit)です。アプリが市場にちゃんと受け入れられ、なくてはならない存在になったのかを測る必要があります。PMF の指標はいくつかあるので、実際の SNS の例を交えて後ほど説明します。
11. Unit Economics の最適化
赤字を出さないアプリ運用にしていくフェーズです。SNS は特殊なアプリで、なかなか最初からプラスの収支にはなりませんでした。ユーティリティ系のアプリであればユーザーが増えるほど課金も増えるので、そこまで気にしなくても良いかもしれません。ここは現在一番苦戦しているところで、まだ黒字化できていないのでリアルな状況をお見せしながら解説します。
12. スケール
収支がプラスに転換したらスケールです。ユーザーをどんどん集めても大丈夫な状態なので、最初 iOS だけだったものを Android 対応したり、多言語対応を進めたりしてさらにユーザーを増やします。マーケティングコストを追加する場合は、「ユーザーがこのくらい増えたらこのくらいの収益が出るから、このくらい広告コストを使っても良い」という計算をしてからスケールする形になります。
おまけ:バイアウト
現時点で SNS のバイアウトは考えていません。まずはしっかり運用して、売上 1 億円・2 億円が出せるアプリにしていきます。その後に良いお話が来れば検討するかもしれません。仮に売上が 1 億円あるなら、何十億円という単位で売却できる可能性もあるので、かなり夢のある話です。
シリアルアントレプレナー(連続起業家)のような、連続個人開発者という立ち位置でいろんなアプリを作って価値を出したいと思っているので、バイアウトで手放してまた 1 からアイデアの検証をやる、というループを回す可能性もあります。
最後まで到達するアプリは少ない
この流れを見れば分かるとおり、途中でユーザーの需要が全然なければピボットしなければならないし、PMF も達成できなければピボットが必要になります。なかなか最後まで到達するアプリは少ないのです。
これは実力がなかったという話ではなく、そもそもアイデアに需要がなかったというだけの話です。結局は確率論に収束していくので、ヒットを出すためには試行回数を増やし、同時に打率自体も上げていくことが必要になります。
最初の段階では打率 1 割かもしれませんが、続けていけば 3 割になっていきます。次のアプリが絶対当たるかというとそんなことはありませんが、以前よりは当たりやすくなっていると思っています。
100% このとおりにやればうまくいくというわけではありませんが、ある程度無駄を出さずに成功までいけるロードマップになっています。
続いてのセクションからは、SNS「ぬい日和」を実例に、このステップ順で具体的なデータをお見せしながら解説していきます。